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自己主張がすぎるブログ

AIで言ったもん勝ち 第3章『羽生善治』

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チェスや将棋、囲碁の世界で人間とAIの対決が行われ始めた頃は、おそらくプロレスで言えば異種格闘技戦やサーカスの見世物小屋のような感覚だったのだろう。
何故なら、一昔前は人間がAIに負けるとは思われていなかったからだ。
人間が打ってきた過去の指し手のデータを大量に読み込み、その中から最善の手を抽出して打つだけのAIに、直感やその場その場で臨機応変に対応する能力を持つ人間が負けるはずがない、負かされる時が来たとしても相当未来の話だと思われていた。

ところが1997年、当時チェスの世界チャンピオンだったガルリ・カスパロフIBM社が開発したAI〝ディープ・ブルー〟に負けてから今日まで、チェスや将棋、囲碁の世界で次々に世界チャンピオン達が急速に進化するAIに敗北し続けているのだ。
単にデータを取り込むだけだったAIが、今では人間の脳が持つ学習能力などの機能を備えたディープラーニングというシステムにより、失敗から学んだり、自ら新たな指し手を開発したりするまでに進化し、もう人間の能力ではとてもとても敵わない域に達していると言うのだ。
そして、今では逆に将棋の棋士たちが、AIの指し手を勉強して真似する時代らしい。

人間の知能とAIの知能が逆転する事態、つまりシンギュラリティのような現象が実際に起きているのである。
(ちなみに、今では最強決定戦は人間対AIではなく、AI対 AIの対決に移行しており、人間は蚊帳の外状態になっている。)

多くの棋士達が、将棋で人間がAIに負けるはずがないと言っていた中で、近い将来、人間はAIに負かされると予測していた天才棋士羽生善治は、かつてAIの印象を聞かれてこう答えた。
「AIには恐怖心がない。なので人間が指せないような思い切った手を打ってくるのではないか。」と。

基本的にAIは機械(ソフトウェア)である。計算能力や学習能力が飛躍的に進化したとしても、羽生名人が言うように恐怖心はないと考えるのが普通であろう。何故なら、恐怖心などの感情や情緒などは人間特有のものだと考えられるからである。

だが、ここでようやく話を戻してみたいと思う。
1回目の投稿で紹介した50年前に作られたスタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』に登場したAIが人間を抹殺しようとした理由。

それが、まさにその〝恐怖心〟だったのである。

つづく