世の中、言ったもん勝ち

自己主張がすぎるブログ

映画で言ったもん勝ち 第6回『バベル』

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賛否両論真っ二つのこの映画は、モロッコ、メキシコ、日本という一見遠い国で起きたそれぞれの出来事が、実は線で繋がっていたというお話。だが、その線がどのようにして繋がるのかばかりを主眼にして観ると失敗する。
この映画が伝えたいのはそんな謎解き要素ではなく、簡単に言うと、どんなに距離(心の距離も含む)が離れていようと人類はひとつであるという事だ。

日本のおっさんが、ただ感謝の気持ちとしてモロッコ人ガイドに贈った一丁のライフルが、モロッコアメリカ人女性の銃撃に使用され、そのアメリカ人女性の子供のベビーシッターがそれによりメキシコで執り行う息子の結婚式に子供を連れて無理やり出席したが、その帰り道で天国から地獄に落とされて…と言った具合。
登場人物達は、ことごとく自分勝手な行動をとり事態を悪化させて被害を拡大させていく。

この映画は何が言いたいかと言うと、何気なく起こしている行動が近くの人だけじゃなくて、回り回って世界中に影響する時代だから、もっと自覚と責任を持って行動せよ!って事だろう。(プラピ演じる主人公が、自分の嫁を助けようとする思いだけで、現地や周りに甚大な迷惑を掛ける描写は、アメリカ政府のやり方を皮肉ってると思われる。)そして、もっと世界の出来事に目を向けて、言葉の壁もぶち壊そうぜ!って事なのだと思う。

ラスト、若い刑事が居酒屋のカウンターで手紙を開く。
その聾唖の日本人女子高生(菊地凛子が怪演)から渡された手紙の内容を全く映さない演出にそれが現れている。

言葉じゃない、感情だと。

ネットでは、あの手紙には何て書いてあったのかが盛んに議論されていたようだが、そんな事はどうでも良いのだ。
手紙を読んだ刑事の切ない表情、それが全てであり、それがこの映画が伝えたかった事なのである。